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◯ ペリクレス紀元前450年頃のアテナイの政治家。民主派の旗頭であり、ペルシアとの戦いでは指揮官としても活躍し、民衆に絶大な人気がある。
戦後復興のシンボルとして、アテナ神殿の再建を考え、幼なじみの天才彫刻家フェイディアスに総指揮を依頼する。これには、公共事業に巨費を投じることで、市民の生活を向上させる目的もあった。
生涯を通して、民主制を定着させるための様々な改革を実行した。公共奉仕は無報酬が当たり前だったが、賃金を支給することで、市民の政治参加を可能にした。また、経済にも明るく度量衡を統一したり全ギリシア会議を呼びかけたりして、市場経済の拡大を図った。
ペルシアによって、前480年に破壊 された神域の遺構の上に、パルテノン 等、いくつかの神殿群が建立された。 |
◯ フェイディアス
黄金と象牙のアテナ神像 |
前447年、代表的な建築家や彫刻家が一堂に会し、神殿の建設が始まった。が、フェイディアスはすぐに作業を中断させる。神々の居場所である天に向かって飛翔するような神殿を構想しているが、大理石の重さを感じさせないための工夫が見つからないのだ。
やがて、従者であり恋人でもある美少年リュシスが、少年等と体操している姿を見て解決の手がかりを得る。工事が再開され、前432年パルテノン神殿が完成した。荘厳かつ優美。ギリシア全土から参拝者が訪れ、口々に「神殿が浮いている」と驚嘆する。アナクサゴラスからも「上出来」と評される。
前430年、「神々を冒涜した罪」に問われたペリクレスをかばって投獄される。獄中で生涯を終えるつもりだったが、病床のペリクレスを見舞うために、アナクサゴラスの手引きで脱獄する。
◯ アナクサゴラス
ぼろ布をまとい日常生活には無頓着な哲学者。30年ほど前に、行き倒れ寸前のところをペリクレスに救われた。
自然現象を神話的な解釈でなく納得のいく理論で解明しようとする「自然学」をイオニアからアテナイにもたらした。
当時は信仰の対象だった太陽を「燃える石の塊」に過ぎないと言い切り、日食の原因を説明した。ペリクレスの政敵、寡頭派の画策により「神々を冒涜した罪」に問われ、自らアテナイを離れた。この時期に、多くの外国人知識人がアテナイから追放された。
◯ リュシス
彫刻家フェイディアスの従者であり恋人の美少年。確かな審美眼をもつフェイディアスから、自分の姿を讃えられることを生きがいにしているナルシスト。
青年期を迎えて、自分自身よりもアテナイの社会問題に関心を抱くようになり、美にしか興味をもたないフェイディアスを冷ややかな目で見るようになる。
◯ トゥキュディデス
少数の貴族による政治が最良と考える、寡頭派の総帥。様々な陰謀を巡らして、ペリクレスを追い落とそうとする。有力者のゴシップを喜び、外国人に偏見を抱くなど、民衆の心理を巧みに操り、罪状をでっちあげる。そのために、フェイディアスは投獄され、アナクサゴラスやダモンなどペリクレスが師と仰ぐ外国人知識人も多く追放された。
「パルテノン」アクロポリスを巡る三つの物語より
柳 浩司 著、実業の日本社 刊
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