2018年6月16日土曜日

力の分解②


 力の合成はできるのに、分解は苦手と感じる中学生は多い。原因は、平行四辺形を描くことの意味を理解できていないことにあるようだ。
 そこで、平行四辺形の作図に頼らずに、分力を求める方法を考えてみた。まどろっこしいやり方だが、色々やってみることが、理解の深まりにつながるかも知れない。

 まず、その第一歩として、2つの分力のうち片方が分かっている問題で練習してみよう。

《 問題0 》右の図は、力cとその分力aを表している。力cを2つに分解したときのもうひとつの分力bを、図の中に描きなさい。

《解き方》
 下の図を見ながら読んでほしい。
①分力aの先端から合力cの先端を結ぶ矢印bを考える。
②矢印bの傾きを変えずに移動させ、3本の矢印の根元をそろえる。
③完成。ただし、力cは消えて分力aと分力bだけがはたらく、と考えることが大切。

《慣れるための練習》
◯ 同じようにして、分力bを求めなさい。
解き方
 ・ 力aの先端からcの先端に向けて、矢印をかく。
 ・ その矢印を平行に移動させ、根元をそろえると完成。
 ここまでで、できあがった図を見ると、元の力cと分力a・bが平行四辺形の2辺と対角線の関係になっているのがわかる。

 それでは、いよいよ分力を2つとも求める、力の分解に取り組む。
 ふつうは、a,bの向きが指定されている。また、最近は分力aとbの角度が90°で、図には方眼の目盛りのあることが多い。
《 問題1》
 斜面の上の台車にはたらく重力(W)を、aとbの方向に分解して、描きなさい。

《 解き方》重力Wの矢印の根元からスタートし、矢印の先端まで、迷路を解くように、方眼の点線の上を進む。

図1のように、一度曲がるだけで、先端に到着するのが理想的。

図2は、二度、三度と方向転換しながら先端にたどりついているが、これでも大丈夫。最後に、a方向の矢印とb方向の矢印を、それぞれ合わせれば図1のときと同じになる。

《 問題2》
 方眼が斜めでなく、垂直に描かれている問題もある。

《 解き方》
 方眼とaやbの点線が重なっている場所が必ずあるので、それをさがして印をつける。求めようとしている分力は、力Wの根元とこれらの印のどれかを結んだ矢印になる。
 aとbにつけた印を基準にして、大きな方眼をイメージすると、問題1と同じやり方で解くことができる。
 



《 問題3》
 垂直な方眼なのに、分力aとbの向きを示す点線の描かれていない問題もある。




《 解き方》
 自分でaとbの点線を描かなくてはいけない。まず、b(斜面と平行な向き)から描くと間違いにくい。

 斜面と方眼の交わっている点が必ずあるので、そこに印をつける。この問題では、緑の印が2目盛りごとに斜めに並んでいる。
 重力Wの始点から、この緑の印と同じ並び方になるように印をつけ、直線で結ぶとbの点線ができる。


 求めたい分力bは、Wの始点と緑の点を結んだ矢印になる。長さは緑の点の1つ目まで、または2つ目、もしかすると3つ目までかも知れない。
 長さは、問題1の解き方で分力aを求めてみるとわかる。分力aは斜面と垂直に交わらないといけないからだ。
 右の2つの図では、上が正解を表している。数学の得意な人は、目盛りを数えて斜面に垂直かどうかを確かめることもできると思う。
 
《 問題4》
 分力の方向は示されているが、方眼のない図で出題されることもある。

《 解き方》
 仕方がないので、自分で方眼を描こう。あとの解き方は問題1と同じ。  
 ただし、方眼のある問題と同じように、答えの矢印は正確でないといけない。
 線の間隔は適当でかまわないが、きちんと平行になっていて、最後の線が矢印Wの先端を通ることが大切。定規を使ってきちんとした線が引けるように、練習をしておこう。

 2つの分力の角度が90°でないときもある。

《 問題5》
 図は、石をくさびで割るようすを示している。くさびに上から力Pを加えると、石を左右に押し割る力aとbが
はたらく。力Pの分力aと分力bを図の中に描きなさい。

《解き方》
① 方眼のかわりに、自分でaとbの平行線を何本か引いて、方眼にする。最後の1本は矢印Pの先端を通ること。
② 問題1と同じ解き方で2本の矢印を求める

③ 緑の矢印を平行に移動して、三本の矢印の根元をそろえて完成。力Pは消えて、aとbに生まれ変わったと考えることが大切。
 慣れて、始めから③のように2本の平行線を引くだけで、分力を求めることができるようになると、力の分解を完全にマスターしたと言える。

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