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「小学校2年生の教科書に、たんぽぽの話がのっていました。『綿毛は風にのってどこまで飛べるかな?』ワイワイと話し合いが続きます。Iちゃんが『じいじの所まで、行きます』と言いました。みんなが『じいじの所ってどこ?』と聞くと『遠い所で、行けなくなったところ』と言いました。みんなが『天国?』と聞いても、Iちゃんは黙って首をふるばかりです。
Iちゃんのおじいさんは、会津で農業をしています。原発の避難地区からは外れていますが、『送った食べ物は全部すててくれ』『もう、ここへはIを連れて来るな』と言って聞かないのだそうです。」
Iちゃんも今は高校生だろうか、現在の中学生で、当時を記憶している者は少ない。原発の問題点として、事故の危険性をあげる生徒もほとんどなかった。やや愕然としながらも、自分も事故が起きるまで放射能や放射線のことはほとんど知らなかったことを思い出した。
付け焼き刃と思いつつ購入した「エネルギーと放射線の授業」を読んで、もともと乏しい知識だっったが、改めて知らないことだらけなのに驚いた。
今回は、当時を思い出しつつ、本書の「放射線って、なんだろう?」の章をまとめてみた。
Q1「放射能がもれた」とは、何がもれたのか?
ウランなど、何種類かの原子は放射線を出すことができる。そのような、放射線を出すことのできる原子を「放射能」と呼ぶ。「放射能がもれた」とは「放射線を出す原子が外に出た」ということだ。
Q2 放射線に種類や性質の違いはあるか?
天然の放射線には、4つの種類がある。発見された順にα線(アルファ線)、β線(ベーター線)、γ線(ガンマ線)そして中性子線と呼ばれている。レントゲンやCTスキャンで使われるX線はγ線と同じものだが、普通の家の壁なら通過することができ、浴びすぎると健康に影響を与えるとも言われている。放射線ごとの透過能力を下にまとめた。
Q3 からだにはどんな影響がある?
からだに当たった放射線は、皮膚にさえぎられることもあるが、内部まで入り込むこともある。からだの中に入っても、一瞬で通りぬけてしまうのだが、電子をはじき跳ばすくらいの大きなエネルギーを持っているので、からだの中の分子を壊して細胞全体にダメージを与えたり、遺伝子に傷をつけてガン細胞をつくったりすることもある。
短時間で全身にあびた場合の、からだへの影響をまとめてみた。
● 7Sv以上を一度に浴びると、100%の人が死亡する。
● 4Svを一度に浴びると、50%の人が死亡する。
● 2Svを一度に浴びると、出血・脱毛などが起き、5%の人が死亡する。
● 1Svを一度に浴びると、気分が悪くなったり、吐いたりする。
● 0.2Sv(200mSv、20万μSv)以下では、症状が出たり死亡したりすることはない。
* Svは「シーベルト」と読む。1Svは1000mSv(ミリシーベルト)で100万μSv(マイクロシーベルト)
Q4 一回のレントゲン撮影で浴びる放射線の量は?
自然な状態で、日本人が一年間に浴びる放射線の量は、平均で1500μSv。0.1秒間になおすと、0.00000048μSV。1回のレントゲン撮影で浴びるのは600μSvなので、1億2千万倍の放射線を浴びる計算になる。しかし、ごく短い時間なのでからだに障害のでる確立はとても小さいと考えられている。
Q5 放射線が強いのはどっち?
〈 問題 〉
① コンクリートの建物の中と外
② トンネルの中と外
③ 日本と外国
④ 太平洋のまん中と、陸地
⑤ 1万メートル上空と地上
⑥ 富士山の頂上とふもと
⑦ 日なたと日陰
⑧ 岩石が出す放射線、宇宙線、食べものが出す放射線
〈 答え 〉
①「コンクリートの建物のなかの方が、外よりも多い」。コンクリートが放射線をさえぎってくれそうな気がするが、コンクリートの原料の中に放射線を出す原子が入っているので、原発事故などの影響がない限り、外の放射線の方が少ない。一方、建物が木造だと差はほとんどなくなる。
②「トンネルの中の方が強い」。コンクリートと同じように、地球をつくる岩石の中にも放射線を出す原子が含まれているので、トンネルの中は外よりも約2倍くらい強い。
③「外国の方が放射線量は多い」。日本の岩石・鉱物には放射線をだすものが少ないので、世界平均が2.4mSvなのに対して1.5mSvなのだそうだ。ただし、ラドン温泉やラジウム温泉ではその2~4倍になる。世界全体だと、ブラジルのガラパリ海岸10mSv/年やインドのケララ地方10mSv/年などが、放射線量の高い地域として知られている。
④「陸地の方が海の上よりも大きい」。海上では、地球の岩石から出る放射線が水にさえぎられ少なくなる。
⑤「上空は地上より放射線が多い」。宇宙を飛び交う放射線があり宇宙線と呼ばれる。ほとんどは太陽から飛んでくるものだ。地球の磁力や空気にさえぎられて、地上には少ししか届かないが、高度が増すごとに強くなり、1万m以上では地上の150倍に達する。飛行機で東京とニューヨークを1回往復すると、0.2mSvの放射線を浴びるといわれている。
⑥「富士山の頂上の方が多い」。空気が薄いので、宇宙からの放射線が強くなり、1年間で約0.7mSv、ふもとにくらべて5割ほど増える。
⑦「ほとんど同じ」。日光がさえぎられる場所にも、放射線は届いているようだ。
⑧「地球をつくる岩石から出る放射線が最も多い」。わたしたちが1年間に浴びる自然界からの放射線のうち、宇宙線は全体のおよそ6分の1、食べものは8分の1。
カリウム原子のなかには、1万個に1個の割合で放射線を出す原子が混じっている。そのため、海藻のワカメやコンブ・ヒジキなど、カリウムを多く含む植物からは放射線が少し強く出ることがある。カリウムは生物になくてはならない原子なので、肉にも野菜にも多かれ少なかれ含まれている。
Q6 放射線の量は何で表す?
3つの単位が使われている。「ベクレル」「グレイ」「シーベルト」だ。「ベクレル」は放射線を出す側に注目した単位。つまり、「放射能」の測定に使われる。一方、「グレイ」と「シーベルト」は受ける側に注目した単位。
これらは、雨に例えて説明されることが多い。ベクレルは雨雲に着目し、1秒間に発生した雨粒を数えると考えて良い。ただし、粒の大きさや温度までは考えない。
グレイは雨で実際にぬれた量を示す。それによって人体が受ける影響はシーベルトで表すが、それは、ぬれ具合が同じでもぬれた場所や雨粒の大きさなどによって影響が異なるから。シーベルトが同じなら、放射線の種類等には関わらず、人体への影響も同じと考えて良いのだそうだ。
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