2018年10月6日土曜日

生物は遺伝子の乗り物?


 イギリスの生物学者ドーキンスが「生命の目的は遺伝子を次代に渡すこと」「生物は遺伝子の乗り物に過ぎない」と唱えたのは40年前。それ以来、「遺伝子を操作すれば望みどおりに生物をデザインできる」などと、遺伝子のはたらきを絶対視する風潮も広がってきている。
 しかし、実際はそう単純なものではないらしい。「遺伝子が過大に評価されている」と考える専門家も多いようだ。メディアでの発言や著書の中から、いくつかを紹介する。

○ 遺伝子のコードは楽譜のようなものと考えている。楽譜には旋律が記されているが、それだけ。実際に曲を演奏するときの、楽器の種類や、いつ・どこで演奏するか等は、楽譜以外の要素で決まる。

○ 人間とチンパンジーでは、遺伝子の98%が同じ。残りの2%にも大きな違いはない。違いはどこにあるのか、人間は子どもの期間が長い。5~6年で性的に成熟するチンパンジーにくらべ、人間は14~5年かかる。子どもの間は、闘争より仲間と楽しむ生活が中心になる。そのときの遊びや探索が、知性の発達を促すと考えられる。


○ 脳に関する人間の遺伝子には、活性化するタイミングの遅いものがたくさん見つかっている。その、タイミングの違いがなぜ生まれるのかは、今後の研究課題。
分子生物学者 福岡伸一氏のお話から

○ 回り車やトンネルなど、豊かな環境で育てられたネズミは脳が発達し、遊具のない環境で育ったネズミより知能が高くなる。しかも、生後2~4週間(ヒトの乳幼児期〜思春期)を過ごせば一生効果が続く。また、母親がこの時期に経験し獲得した性質は、子にも受け継がれる。
脳研究者 池谷裕二氏の著書から
「脳には妙なクセがある」新潮社 

○ 一卵性双生児について、二人の知能指数をくらべると、身長が遺伝するのと同じ程度に遺伝子の影響を受けていることが分かった。そこで、その遺伝子を探したが、膨大な数の遺伝子が関与していて「この能力にはこの遺伝子」というふうに特定することはとてもできなかった。はたらきを確かめる実験でも、その時々でまちまちな結果の出ることが多くあった。

○ 遺伝子のはたらきはオーケストラの演奏に似ている。色々な楽団のそれぞれの個性について「それは第3バイオリンの演奏」というふうに、特定できないのと同じだ。
教育心理学者 安藤寿康氏のお話から


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