2017年4月7日金曜日

地球と生命の歴史⑦「ヒトの直系」


 「ヒトの直系」(井尻正二 著、大月書店)は、水素からヒトまでの、進化の過程をたどったユニークな本。1977年の発行である。今回は、本書を参考にしながら、
生命誕生からほ乳類の登場までをたどってみる。

《先カンブリア時代》
クロストリジウム(40億年前)
 糖やアミノ酸などの有機化合物を分解して、活動のエネルギーを得る。大気中に酸素のない時代に誕生した。生命の起源にもっとも近い生物といえる。

硫酸還元菌
 海底や湖底に住む。25℃〜40℃で生活するが、0℃でも生活できる。硫酸塩を硫化水素に変化させることで活動のエネルギーを得ており、酸素がなくても生活できる。

藍藻(30億年前)
 DNAや葉緑素は細胞内に散らばっている。それらを包み込むための核や葉緑体などのつくりは、細菌と同様に持っていない。

鞭毛虫(20億年前)
 もっとも原始的な単細胞生物で、植物性鞭毛中と動物性鞭毛中に大別される。1本ないしは多数の鞭毛をもち、波動膜や偽足をそなえたものもある。分裂の他に、出芽や有性生殖によってもふえる。

中生動物(7億5000万年前)
 単細胞生物と多細胞生物の中間と考えられている動物。細胞の数は20〜30個で、多細胞生物の中では最少。ニハイチュウは、体内に組織や器官をもたず、マダコの腎臓に寄生して生活している。体長1〜7mm。

海綿動物(約6億年前)
 壷の形をしていて、底は水中の物体に付着する。体の表面にある無数の入水孔から水と食物を吸収し、胃を通過したあとは上部の大きな排水孔からはき出す。

ヒドロ虫
 クラゲの仲間。その中で、もっとも単純なつくりをしている。海綿動物からヒドロ虫を経て、まずクラゲ類、続いてサンゴやイソギンチャクの仲間が登場したと考えられている。どれも、刺胞という毒針をもち、神経や筋肉はあるが中枢神経はない。また、口と胃はあるが肛門がなく、不消化物は口から排出する。
カツオノエボシとヒドラ
 猛毒で有名なカツオノエボシは、ヒドロ虫の群体。淡水に住むヒドラもよく知られている。
 以前は腔腸動物としてまとめられていたが、クシクラゲなどが有櫛動物として独立し、ヒドロ虫など他のクラゲの仲間は刺胞動物と呼ばれる。
 この後、枝分かれした別の系統からは、古生代のサンヨウチュウや中生代のアンモナイトなど、古生物界のスター達が誕生している。

《古生代》
ヤムシ(5億3000万年前)
 左右対称のからだで、口から肛門につながる消化管をもつ。脳と発達した神経節もそなえている。体長は2〜3cm。

エノコロフサカツギ
 背骨のもととなるつくりがあり、原索動物と呼ばれる。セキツイ動物と無セキツイ動物の中間に位置する。現生のエノコロフサカツギは体長1mm弱で、水深200〜300mの海底に住んでいる。

ホヤ
 食用として親しまれている。膜で覆われたからだの上部に入水口と出水口があり、海水中の微生物をろ過し消化管に送る。食物は胃や腸を経て肛門に達し、最後は海水とともに出水口から排出される。
 幼生はオタマジャクシと呼ばれ、尾で泳ぐ。幼生のもつ脊索・神経管・尾は成体になると退化するが、脳・心臓・内柱・消化管は成体にも残る。
 このため、ホヤの幼生がセキツイ動物の直系の祖先と考えられている。

コノドント(5億年前〜)
クリダグナサス
 コノドントとは、「円錐形の歯」の意味。これを備えた動物の仲間もコノドントと呼ばれ、その中でもクリダグナサスは最も原始的な魚と見られている。体長は数cm〜数十cmで細長い円筒形のからだ。前向きにあごの無い口が開いていて、そのまわりと内側に小さな鋭い歯がならんでいる。浅い海の中を活発に泳ぎながら、小型の動物をエサにしていた。

ケファラスピス(4億年前)
ケファラスピス
 体長18cm、からだの前部分は頭甲、胴から骨板におおわれている。頭甲の下面に開いた丸い口で食物を吸い込む。ヒレが発達しており、からだの後方をくねらせて、かなり泳ぎまわることができたと考えられる。

ケイロレピス
ケイロレピス
 体長42cm。現在、魚の中で硬い背骨をもつグループは全体の95%。発達したヒレとエラ、うろこと浮き袋が特徴。世界中に広がり、様々なエサを食べている。
 ケイロレピスはそれらの魚たちの先祖。背骨はまだ十分硬くなってはいなかったが、するどい歯と上下に大きく開く口を備えていた。
 一方、背骨が柔らかい魚のグループにはサメやエイが属しており、このグループの魚はすべて肉食。また、3番目のグループには、ヤツメウナギとヌタウナギの仲間がいてあごの無い吸盤のような口で、他の魚に寄生したり泥の中のプランクトンを食べたりしている。


エウステノプテロン(3億8千万年前)
 体長60〜100cm。ヒレに骨があり、河底の植物をかきわけながら泳いだ。河で不足しがちなミネラルを補うために、骨格が発達した。硬い背骨をもつ魚の仲間だが、両生類に似た特徴も備えており、エラと肺の両方をもつ肺魚の仲間。
 
イクチオステガ(3億6500万年前)
イクチオステガ
 体長1.2〜1.5m。最初の両生類だが、魚類の特徴も多くのこしている。淡水の肉食性で、幼生はえら呼吸をしていたと考えられる。
 地上で体重を支えたので、扁平なからだをしていた。歩くときは、頑丈な脚でからだを持ち上げ、魚のようにからだをくねらせた。

パレオチリス(3億2300万年前)
 もっとも原始的なハチュウ類。30cmくらいの大きさで機敏な夜行性のハンター。鋭い歯で昆虫などを食べていた。

バラノザウルス(2億8千万年前)
 体長1〜1.5m。ホニュウ類形ハチュウ類といわれ、ホニュウ類の直系のハチュウ類。
 脚の骨格は完成形に近く、活発に運動できた。犬歯や臼歯など、場所によって異なる形の歯を持っていた。水辺に住み、魚を食べていたと考えられている。

ディメトロドン2億8千万年前)
ディメトロドン
 体長1〜3m。バラノザウルスの後えいといわれ、形の異なる歯を使い分けて、史上初めて咀嚼をした生物。
 背中の大きな帆が特徴で、体温を調節し他の生物が動けないような早朝にも活動できたと考えられている。

《中生代》
リカエノプス(2億6千万年前)
 体長1.2m。ハチュウ類だが、恒温でからだが毛におおわれている。母乳で子を育てるなどほ乳類のような生活をしていた。脚もトカゲのように這うのではなく、獣のようにからだを持ち上げ活発に運動することができた。

モルガノコドン(2億年前)
左からモルガノコドン、アンフィテリウム、デルタレリジウム
見た目は似ているが、子育ての仕方はしだいに変化していった。
 ネズミくらいの大きさ。ほ乳類だが、カモノハシのように、卵を産み乳で育てる。昆虫などを食べていたと考えられている。

アンフィテリウム(1億7千万年前)
 ネズミくらいの大きさ。ほ乳類だが、カンガルーのように子を育てるための袋をもっていたと考えられている。

《新生代》
デルタテリジウム(6千万年前)
 中型のリス程度の大きさ。人と同じように、胎盤で子を成長させてから出産し母乳で育てる、多くのほ乳類の共通の祖先と考えられている。




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