2017年8月14日月曜日

小さなコケの強い力


 植物は、からだが大きいほど有利だ。ライバルである他の植物よりも高く葉を広げ、たくさん日光をあびることができる。それは、胞子でふえるコケやシダにとっても同じで、光合成をしないカビやキノコを除いて、みんな日光を必要としている。

シダの仲間のヘゴは4mの高さに成長する
 しかし日光と同じように水も必要だ。高く持ち上げた葉に、土の中から水を届けないとしおれてしまう。そこで多くの植物は、水を運ぶためのパイプをからだの中に持っている。種子植物だけでなく、シダもこのパイプを持っていたので、大きなからだを持ち、葉を高く掲げることができた。

 コケ植物には、そのパイプがない。そのため、からだを大きくすることができなくて、全身がずぶ濡れになる雨などのときに、からだ全体で水を吸収している。
 だから、湿り気の多い場所で生活していることが多く、ひ弱なイメージでも見られがちなのだが、実は意外にそうでもないのだ。
ブロック塀などでよく見られるギンゴケ
 からからに乾燥したブロック塀の上や他の植物が枯れてしまうような高い山、あるいは南極大陸でもコケは生活できる。
 小さなからだは、乾燥するとひからびて枯れたようになるが、死んでいるわけではなくて水にぬれると元気をとりもどす。南極で1500年間氷づけになっていたコケが復活した例もあるそうだ。

 乾燥や寒さなど、植物にとって厳しい環境の場所も、一年中厳しさが続くわけではない。雨の多い時期や短い夏を生かして、コケは大急ぎで成長し子孫を残す。これは、コケのからだが小さいからできることだ。学者のなかには、からだの大きな植物から進化して小さなコケができたのではないか、という人もいる。

0 件のコメント:

コメントを投稿