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ロス卿がスケッチしたM51 |
「星雲」は、ぼんやりしたシミのように見える奇妙な天体で、古くから存在を知られていたが、望遠鏡によって新たな星雲が次々に見つかるようになった。
シャルル・メシエ(フランス)が、1764年から20年をかけて103個の星雲を一覧表にまとめあげると、さらに、ハーシェルは自慢の大型望遠鏡で2500個の星雲を見つけ、その正体を「星雲は若い星とそれを取り巻く塵でできている。それらは銀河系の内部にあり、やがて集まって惑星になる」と発表した。
ロス卿の巨大望遠鏡 |
1839年に発明された銀板写真(ダゲレオタイプ)と、それを利用した変光星の観測が、この問題に決着をつけた。変光星は周期的に明るさの変化する星で、「星は変化しない」という古代からの定説を否定する天体として注目されてきた。また、カメラは、そのシャッター速度を調節することで、望遠鏡の感度を飛躍的に高めることができる。たとえば、プレアデス星団にある星の数は肉眼だと7個、ガリレオ望遠鏡でも47個だが、写真では2326個を確認することができた。これによって、遠くにある変光星でも詳しく客観的に観測できるようになった。
セファイドは明るさが脈動する |
天文台の女性職員ヘンリエッタ・リーヴィット(アメリカ)は、数多くの天体写真を見比べては変光星を探す作業をしていた。そのうち、同じ星雲の中にあるのだから地球からの距離もほぼ等しいのではないかと思いつき、小マゼラン星雲で発見した25個の変光星について、明るさとそれが変化する周期の関係を調べた。すると、明るい星は周期が長く、暗い星の周期は短いことがわかった。
セファイドは周期が長いほど明るい |
これらの変光星は、ケフェウス型変光星(セファイド)と呼ばれ、現在では自分の発する熱によって膨張と収縮をくり返す不安定な星であることが知られている。①温度が上がると膨張する→②膨張したことで圧力と温度が下がる→③圧力が下がると収縮が始まる→④収縮すると圧力と温度が上がる。この①~④を繰り返すことで明るさが脈動する。この、周期と明るさの関係はノーベル賞に匹敵する発見で、リーヴィットの法則と名づけられた。
ハーシェルの、星までの距離を知るための取り組みは「どの星も、元の明るさは同じ」という、やや乱暴な仮定から始められたが、それぞれの星がもつ本来の明るさを、変光星の周期によって知ることができるようになった。これに、年周視差などのテクニックを組み合わせることで、人類は宇宙を測るための信頼できるものさしを手に入れた。
「宇宙創生」サイモン・シン著 青木薫訳 新潮社を参考にしています。
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