2019年10月22日火曜日

銅イオンはなぜ+2?


 イオンに変わる時、1つだけ電子が移動する原子と、2つ移動する原子がある。ほとんどの場合、周期表の位置で納得できるのだが、銅のように+2になる理由がわかりにくい原子もある。
 そこで、始めてイオンの勉強をする、中学生のための解説を考えた。前半は、一般的なイオンのでき方について書いており、後半で銅など「わかりにくい原子=遷移元素」について説明した。

原子がイオンに変わるしくみ》

 原子では、徒競走の選手がトラックを走るように、電子が原子核のまわりを回っている。徒競走と違うのは、1つのコースの中を複数の電子が走れるというところ。
 ひとつのコースに入れる電子の数が、コース毎に決まっていて、いちばん原子核に近い第1コースには2つ。次の第2コースには8個まで入れる。
 さらに、電子は内側のコースからつめて入らないといけないので、電子が3個の場合、第1コースを2個、第2コースを1個の電子が回ることになる。そのため、電子が3個あっても、第3コースには誰もいない。


 コース毎の電子の定員は、第1コースから外に向かって2個、8個、8個、18個、18個・・・これらの数字は、周期表の上から、同じ列に並んでいる元素の種類を数えたときの、2個、8個、8個、18個、18個・・・と一致している。

 電子の走るコースを知るには、シュレディンガー方程式をつかって計算するが、大変複雑でコンピュータを使っても、昔は答えが出るまでに1週間もかかっていたそうだ。

 そこで、計算の結果を簡単に表すためのルールがいくつか考え出された。1コースに2個、2コースより外には8個ずつ入る。電子はコースを内側から埋めて行く。というのが、もっともよく知られているルールだ。

 また、イオンのでき方や化学変化について考えるときは、一番外側のコースを回る電子の数が重要になることもわかった。だから、これらの電子には特別に最外殻電子という名前がつけられている。

 原子には、その最外殻電子の数を、定員とぴったり同じにしようとする性質があり、足りない電子を外から持ち込んだり、逆に余分な電子を外へ追い出したりする。

《周期表の左から1列目の原子》H,Li,Na,Kなど

ナトリウム原子の電子配置
 たとえば、ナトリウム原子(Na)では、電子の数が11個なので、最外殻電子の数は1。このような場合、最外殻電子の数を8にするために、余分な1個を追い出すので、電気的には+の電気が1つ多いNaになる。



《周期表の左から2列目の原子》Be,Mg,Caなど
 たとえば、カルシウム原子(Ca)では、電子の数が20なので、最外殻電子の数は20−(2+8+8)で2個。このような場合も、余分な2個を追い出そうとするので、カルシウムイオンはCa2+になる。


《周期表の右から2列目の原子》F,Cl,Br,Iなど

塩素原子の電子配置
たとえば、塩素原子(Cl)では、電子の数が17なので、最外殻電子の数は7。このような場合は、電子を1つ取り入れて8にしようとするので、電気的にはーのClになる。


《上から4列目の原子》
 4コース、5コースのように原子核から遠くなると、コースに入れる電子の数が増え、それらが互いに影響を及ぼし合うので、電子の配置はもっと複雑になる。

 4コースでは、同じコースの中がさらに3つの層に分かれており、各層には内側から10個、2個、6個の電子がそれぞれ入ることができる。ところが、このコースでは、「電子は内側からつめる」のルールに反して、まん中の2個の層から先に電子が入り、次にその内側の10個の層を電子が順に埋めていく。
 そのため、カリウム(K)とカルシウム(Ca)は、これまでのイオンのでき方と同じに考えて良いが、ScからZnまでは最外殻電子が2個のままなので、イオンもみんな+2になる。銅イオンがCu2+となるのはこのためだ。ただし、元々が変則的なので、条件によっては、最外殻電子が3つあるような化学変化をする原子もあるので、ややこしい。

0 件のコメント:

コメントを投稿