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《古代ローマ》
伝統的な「地球中心説」は、現実世界で私たちが受ける感覚とマッチしており、誰もが納得できるものだった。ただし、弱点がなかったわけではなく、水星・金星・火星・木星・土星の5つの惑星が見せる変則的な動きについては、説明ができなかった。
この問題に「地球中心説」の立場から答を出したのは、ローマ人の天文学者プトレマイオスだ。彼の考案した天体モデルは、円に円を複雑に組み合わせることで、観測結果と計算結果が高い精度で一致するようにできていた。彼が、円の組み合わせにこだわったのは、プラトンやアリストテレスの唱えた、「『天』は『完全』な領域であるから、天体の運行も完全な図形である『円』を描くはずだ」という伝統的な天界の姿を尊重したためだった。
プトレマイオスは、研究の成果を「ヘー・メガレー・シュンタクシス」として刊行した。西暦150年頃に書かれたこの本は、827年にペルシア語に翻訳され「アルマゲスト(もっとも偉大なもの)」の名まえで広く知られるようになった。この時期、中世ヨーロッパの天文学は停滞していたが、イスラム教国では各地に大規模な天文台が建設され、研究が続けられた。
《中世ヨーロッパ》
ヨーロッパの学者たちが、プトレマイオスの著作を手にした時には、アラビア語を母国語に翻訳し直すことが必要だった。この作業は、11世紀頃からスペインのトレドで始められたが、その数百年間は古代人の叡智に圧倒されるばかりで、その中に誤りもあるとは、思いもしなかった。
「宇宙創生」サイモン・シン著 青木薫訳 新潮社を参考にしています。
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