2023年8月9日水曜日

天文学こと始めⅢ  ー⑤ホイルと定常宇宙理論ー

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○ 重い元素の合成

 英国の研究者フレッド・ホイルとトマス・ゴールド、ハーマン・ボンディの3人は、独自の宇宙モデルを考案し、ビッグバン理論に対抗した。彼らのモデルは、膨張を続けながら、それとは矛盾せずに宇宙の永遠不変を可能にしていた。

 それは、銀河と銀河の間隔がひろがり、宇宙が2倍に膨張しても、古い銀河と銀河の間に新しい銀河が誕生することで密度が保たれる、というものだった。計算によると、100年に1度、エンパイヤステートビルと等しい体積の空間に原子が1個誕生すればよいのだそうだ。


 彼らの「定常宇宙モデル」と「ビッグバン・モデル」は、どちらも決め手となる観測データを得られないまま、論争だけが続けられた。皮肉にも「ビッグバン」の名づけ親はホイルで、彼が相手の理論を茶化して使った言葉が、両方の支持者から受け入れられ定着したのだ。

 また、ホイルは終末を迎えた星に着目することで、ヘリウム原子より重い元素がつくられるまでの道筋を示した。星はその重さに応じて、大爆発を起こしたり、静かに燃え尽きたり、さまざまな終わり方をする。

 彼はあらゆるタイプの星について、その終末までに内部の温度と圧力がどう変化するかを計算した。その結果、ほぼすべての元素が合成できるだけの、さまざまな高温・高圧の組み合わせがそろっているだけでなく、鉄や酸素は豊富なのに、金やプラチナが少ないことの理由も説明できるようになった。





 彼の目的は定常宇宙理論の強化だったが、これはビッグバン理論の行き詰まりを解決することにもつながっていた。つまり、ビッグバン直後の高温の中で水素やヘリウムなどの軽い元素がつくられ、それらが集まってできた輝く星の内部で、鉄などの重い元素は合成されていたのだ。

「宇宙創成」サイモン・シン著 青木薫訳 新潮社を参考にしています。


   
  


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