2023年8月9日水曜日

天文学こと始めⅢ ー①炎色反応と赤方偏移ー

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○ 星は何でできているか(炎色反応と分光学)

 光にはさまざまな色がある。虹が7色に見えるのは有名で、虹のアーチの外側には赤色、内側には紫が配色されている。目に見える光だけでなく、見えない光もある。虹にも、赤色の外側に目には見えない赤外線と呼ばれる光があり、紫色の内側には紫外線がある。

 物質は、高温になると光を発して輝き始めるが、その色は原子の種類によって決まっていることが、1752年にスコットランドの物理学者トマス・メルヴィルによって発見された。これは、炎色反応と呼ばれ、身近な例では花火に様々な色をつけるのに利用されている。

 原子は、加熱されると光を発するようになるが、それだけでなく、発するのと同じ色を吸収する性質のあることもわかった。そこで、物質から出てくる光を色ごとに測定し目に見えない光についても詳しく調べることで、科学者たちは遠くで輝いている星の温度だけでなく、成分も知ることができるようになった。


 この新しい学問、分光学によって太陽は大気の75%が水素であることがわかった。残りの25%を占めている気体はヘリウムと名づけられたが、当時はまだ未知の気体で、地球上で存在が確認されたのは、その25年後だった。

 太陽より遠い星たちについても、次々とその成分が明らかにされていった。それによって、遠くの星も地球と同じようなありふれた元素でできていることがわかった。古代の哲学者たちが考えていたような、地上の物質とは無縁の「第五元素」等ではないことがはっきりした。


○ 宇宙は膨張している( 光のドップラー効果)

 分光学を使うと、天体の温度や成分だけでなく、動いている物体の速さも知ることができる。なぜ光で速さを測れるのだろうか。


 サイレンを鳴らして救急車が走っていると、その音だけで動いている方向を判断できることがある。近づいてくる時はピーポーが高く、通り過ぎると低く聞こえる。これがドップラー効果で、光の場合には色合いが青っぽくなったり、赤っぽくなったりする。それを肉眼で確かめることはできないが、分光器を使うと正確に測ることができ、スピード違反の取り締まりや球速を測るスピードガンなどに利用されている。


 天文学の分野では、相手が遠ざかっているときに赤っぽくなる「赤方偏移」が有名で、その逆の「青方偏移」はあまり聞かない。なぜだろうか。


 1912年にヴェスト・スライファーが初めて、ドップラー効果を使って銀河の速度を測定したときに、15年間をかけて測定した45個の「銀河」のうち、地球に近づいているのは4つだけで、残りの41個は地球から遠ざかっている「赤方偏移」を示した。

 この結果は、当時の天文学者たちを混乱させた。まるで宇宙全体が銀河系を嫌って逃げ出しているように見えたからだ。当時の天文学者が想像していたのは、宇宙空間にバランスよく銀河が分布し、近づくものもあれば遠ざかるものもあるだろうけれども、それらの数はほぼ半々という宇宙の姿だった。

「宇宙創成」サイモン・シン著 青木薫訳 新潮社を参考にしています。


     


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