2023年8月9日水曜日

天文学こと始めⅢ ー②ハッブルと逃げていく銀河ー

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○ 膨張する宇宙

 ハッブルは、ウィルソン山天文台の100インチ望遠鏡を使って、逃げていく銀河の謎に挑むことにした。忍耐力に優れた助手のヒューメイソンと共に2年間で46の銀河を観測することで観測技術を向上させ、さらに工夫を重ねて次の2年間には最初の頃の20倍も遠くにある銀河まで観測できるようになっていた。

 ハッブルの観測でも、すべての銀河は「赤方偏移」を示していた。つまり、地球から遠ざかる方向に運動していたのだ。それだけでなく、銀河の遠ざかる速さが地球からの距離に比例していることもわかり、これは「ハッブルの法則」と呼ばれた。ただし、これは地球の所属する銀河系から他の銀河が一斉に逃げ出しているわけではなくて、すべての銀河どうしが互いの間隔を広げ、遠ざかりつつあることを示している。つまり、どの銀河から宇宙をながめても、宇宙にあるすべての銀河が自分から遠ざかって行くように見えるということだ。


 変化しないと思われていた、時間や空間
も伸び縮みすることを、アインシュタイン
が明らかにした。空間の拡大は風船のふく
らむようすに例えられる。
 風船の表面にある銀河どうしの間隔は広
がっても、その中にある星と星の感覚は、
銀河内部の重力によって、一定に保たれる。

 ハッブル自身は、精度の高い観測に専念し、その結果から推察される宇宙の未来や過去の姿には、あまり関心を払わなかったが、これを宇宙が膨張している証拠と考えた科学者もいた。彼らの考える宇宙の誕生は、まず宇宙の全物質がごく小さな一箇所に押し込められていて、それが爆発的に広がり現在の姿にまで大きくなったというものだった。拡大している銀河の速さから逆算して、その爆発が起きたのは18億年前というふうに計算することもできた。ただし、現在では、爆発(ビッグバン)が起きたのは138.2億年前と考えられている。

 このまま膨張が進むと、宇宙はしだいに密度が小さく希薄になって滅びるとも考えられた。しかし、安定して永遠に続く宇宙を信じている天文学者の方が多く、「遠くの銀河ほど速度が大きいのは、速いから遠くまで行けたのであって当然の結果。宇宙が膨張していることの証拠にはならない」や、「銀河から逃げ出した光は、銀河の重力によってエネルギーを奪われるので赤方偏移を起こす。銀河が遠ざかっているわけではない」などと反論した。

 中でも、宇宙が誕生したはずの18億年前よりも古い、34億年前に形成されたと思える岩石の存在は、頭の痛い問題だった。

「宇宙創成」サイモン・シン著 青木薫訳 新潮社を参考にしています。


    


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